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卵の緒

瀬尾まいこさんの「卵の緒」を読む。


「幸福な食卓」の由里子がそうであるように、
母親である君子が非常に強い。
実際に血がつながっていない育生を目いっぱい愛し、
自分が生きていくために必要な人を愛す。
自由なようでいて、
目の前の人に気を使い、
飾らない人柄で子供を見守る。

それに、みんな優しい。
主人公の育生も、
君子も、
朝ちゃんも、
池内くんもみんなもれなく優しい。
こんな人ばっかりで社会が成り立っていたらいいのにって思う。
残念ながら優しい人だけでは戦争は無くならないけれど、
ただ奔放であることが美徳とされる価値観に、
傷つけられる心配は少なくなる。
そう思う。

そして、かっこいい。
すごく美味しいものを食べたとき、
その美味しいものを食べさせたい人が自分が一番好きな人なんだ。
と、言いつつ、
同時に、
恋愛関係になったら「美味しいものができたから、ちょっと来て」っていう軽快な気持ちにはならない。
って言うことを子供にさらっと言える君子はかっこいい。


「幸福な食卓」で主人公の佐和子は、
映画におけるテーマソングである「くるみ」を地で行くような不幸に見舞われる。
不条理というはいて捨てるほどある出来事から、
佐和子は多くのことを学ぶ。
家族という特殊な共同体が、戸惑いながらでも守ってくれる幸福を知り、
彼女は救われる。

君子も同じように、
新たな家族を手に入れることで自分を見失わずにすんだ。
信じられないバイタリティで動いて手に入れた血の繋がらない育生を育てていく中で、
多分、
彼女自身も育っていたはずで、
だからこそ彼女は、
強くて優しくてかっこいい女になれたのだろう。

こんな女は、そういない。


文庫本のページにして僅か70ページのほどだけど、
凝縮されたすばらしい小説だと思います。
r-waver * おすすめ。 * 23:17 * comments(0) * trackbacks(1)

環境問題のウソって、ナニ?

 飲み屋のネタになりそうな話を一つ。


 安倍首相が、G8出席のためにドイツに行っています。
 今回の主要なテーマの一つが、「地球温暖化対策」なそうで、米欧で歩調が合いそうも無い中、日本はその折中案とも言える提案をし、イニシアティブを取ろうとしているらしいです。
 京都議定書から十余年、新たな枠組みを作ろうとしているわけです。

 さて問題です。
 次にあげる事象は、それぞれ正しいことを言っているでしょうか?

|狼紊温暖化すると、北極や南極にある氷が解けることにより、海水面が数メートル上昇する。
∪疆鼎鮃圓Δ函∪侈の消費量が増える。
A乾撻奪肇椒肇訃暖駑未紡个垢襯撻奪肇椒肇襪虜突用量は、10%を切っている。
ぅ撻奪肇椒肇襪鯒海笋靴討任るダイオキシンは、人体に対して、青酸カリの6万倍の毒性を持つ。

 答えはコメント欄で。。。
r-waver * おすすめ。 * 22:30 * comments(1) * trackbacks(2)

美しい円

坂木司さんの「引きこもり探偵」シリーズは、
言うまでもないことだが、
ミステリーを主題にしたものではないだろう。
主人公である坂木(作者と同じ名前)と鳥居の関係は、
作中では「支えあう杖」と表現されているが、
世間一般でこれは紛れもなく「親友」っていうやつだ。
言い切ってしまえば簡単なこの関係を、
実に文庫本3巻にわたり丹念に描いたのは、
誰にでもある純粋や無垢への憧れ、
社会との摩擦を焦燥と感じる自分への失望、
失うことへの恐怖を描きたかったからではないか。
そして、
それを乗り越えて新たな一歩を踏み出す勇気を描きたかったからではないか。
と、
思った。

連作短編集であるこの作品群では、
先の作品のゲストが次の作品では重要な脇役となって現れる。
「青空の卵」の文庫版解説の北上次郎氏が仰っている通り、
一番初めの事件のメインである巣田香織は最後まで登場するし、
坂木と鳥居を通して出会った他短編の主人公たちが、
いつの間にか出会って友達になっていたりする。
実際は、
そういう人のつながりが通奏低音のように流れることによって物語のメインテーマを示唆しているが、
こんなことを気にする必要もなく、
次のページには誰が出てくるんだろう、と、
楽しみながら読むことができるようになっていて嬉しい。

主人公が居ない場所でも当然のように時は流れ、
出会いも別れも繰り返されている。
ともすれば忘れ去られがちな当たり前の真実を、
坂木さんは自然に書いている。

ちなみに、
勘のいい人にはちゃんと、
大きな流れのキーパーソンは誰なのかを印象付けるようにもなっていて、
こちらも楽しかった。

まぁまぁ余談として若干(的外れ気味に)突っ込むならば、
作中で坂木と鳥居の関係は、
しばしばワトスンとシャーロックホームズに例えられているが、
これは若干難しい。
はっきり言えば鳥居はショーロックではなくマイクロフトのようだし、
坂木の性格は3度の結婚をしたワトスンとは似ても似つかない(ワトスンは物覚えもあまりよくないし)。
コナン・ドイルが描いたコンビの関係は大人の友情であり、
例えば、
愛妻と死別したワトスンに対して「仕事だよ、ワトスン。悲しみを忘れるには仕事が一番だ」(若干違ったかな?)と言って、
ベイカー街に友人を呼び戻すホームズの心情のようなもの。
坂木と鳥居は、
この状態までまだ進化できていない未熟なものだ。
物語の主題だから当然なのだが、
極薄なシャーロッキアンな私としては、
少しだけ「?」が頭に浮かんでみたり。

本筋じゃないけどね。
本筋なんだけどさ。。。。

鳥居が犯人たちに語る台詞のほとんどは、
自分自身や坂木に跳ね返ってくる言葉である。
そして、
全ての読者に対して、
人との係わりを否応なく突きつけてくる。
誰だって強くありたいし嫌われたくはない。
自分のいやな部分を見せたくもないし見たくもないはずだけど、
彼らは、
純粋にその偽善を否定したり、
矛盾と戦いながら、
やがて、
ある結論へ向かう。

大人になるということ。
これがこの作品のテーマであると思う。
ホームズとワトスンのような関係だけではなく、
大人になるってどういうことなのか、
坂木はちゃんとたどり着いている。

ああ、
私もたどり着ける日は来るのだろうか、
鳥居の部屋が描く美しい円に。
そんなことを思いながら、
この物語を読み終えた。


それと、
坂木司さんは覆面作家ですけど、
まぁ、
女性なんだろうなと思いますです。
男性作家にはかけない男のエゴが随所に出てきます。
男性作家にはかけない女性のずるさも出てきます。
毎日のように何気ないことを書く電子メールと、
自分のお気に入りの場所で風景や思いを直筆で書いた手紙。
どっちが大切かなんて、
比べること自体がナンセンスじゃないのかねぇ。。。。
r-waver * おすすめ。 * 00:03 * comments(0) * trackbacks(0)

最近のおきにいり。

思いつきでタイトルを変えてみました。
意味はありません。


有川浩さんという方をご存知でしょうか?
第10回電撃小説大賞を受賞したし、
最近の「図書館」シリーズでは2006年上半期本の雑誌大賞1位をとったライトノベル作家です。
私はここ2ヶ月、
有川さんの作品を一気読みして、
ようやく既刊の単行本を全て読み終えました。
何しろ1冊が470ページを超える作品もあるので、
速読スキルを持ち合わせていない自分には時間がかかります。

厚いですけど、
非常に読みやすいです。
ライトノベルというジャンルは若い世代向けの作品群であり、
その出身である方ですから、
それほど難しい表現も漢字もありません。

基本的に飛び道具が多いです。
「塩の街」では確実に死にいたる正体不明の病「塩害」。
「空の中」では人間に見つかることなく成層圏に浮遊する直径数十キロの生命体。
「海の底」では横須賀に大量上陸した人間よりも体長の大きなザリガニ。
「図書館シリーズ」では図書館の自由を守るために検閲機関と命を懸けて戦う部隊。。。。
ん〜飛び道具。

ただ、
飛び道具を使って描かれるのは、
人間の赤裸々な感情や、
社会の摩擦、
我侭や優しさ、
愛情といったものであり、
別に逝った逝かないを主としたものではありません。
未知の知的生命体に多数の意思の集約方法を教えたり、
狭空間に閉じこめられてストレスを感じながらも慣れていく様子は、
コミカルでもあり、
緊張感もありで、
それを担保するために語られる台詞や感情の流れがすばらしい。
最新作の図書館シリーズは、
特に人と人との係わりに焦点が置かれ、
郁と堂上の成長を軸に、
権威の不条理や正論の危うささえも(いささかご都合的かもしれないが)描かれていきます。

非常に大きな仕掛けが前提であるため、
だめな人には全く持ってだめでしょうね。
私は大好物なのでいいのですが、
そういうのがだめな人にはだめでしょうねぇ。。。。

ちなみに、
人、死にまくりです。
数行もかからない間に、
塩害で人口が1/3になったりしてます。
こういうのがだめな人にも、
上手く咀嚼できないでしょう。

でも、
最も好き嫌いが分かれる部分は、
上記の作品の全てが「ほぼ恋愛小説」であるということでしょうね。
ほぼ、っていうのは大前提がSF的要素が入っているからってところで、
「恋愛を書くのは息をするのと同じ」と有川さん自身がおっしゃっている通り、
作品を読める第1条件が「恋愛小説が読める」ということかもしれません。
これに照れたらやってらんない、
これが好きならたまんない、
ってところでしょうか。
なぜ「レインツリーの国」について上記で触れていないかっていうと、
この作品だけは正面切って最初から最後まで恋愛小説であり、
正論や世間の眼差しを描く視点は同じでも、
やはり若干異質なんです。

私は恋愛小説系も(っていうか小説全体が)大好物なので、
「レインツリー」を含めて、
この辺もいい感じです。

「野生時代」や「電撃hp」で短編を発表されているので、
このあたりか短編集「クジラの彼」を読んで楽しめるなら、
長編をお勧めします。
じゃないと、
ちょっとお勧めしずらいですね。
(この辺で諸手をあげて勧められない気弱さよ。。。)

ちなみに私が好きなのは、
「ファイターパイロットの君」
「有能な彼女」
ですね。
長編をあげないのは、
当たり前すぎるだろうという僅かなる(何かへの)抵抗です。
前者は「空の中」、
後者は「海の底」からのスピンオフで、
どちらも高濃度ベタ甘の恋愛短編です。
首筋あたりがめっちゃくちゃ痒くなるのをこらえつつ、
微笑ましさにニヤつきそうになるのを抑えつつ読むのがいいんですよ。
r-waver * おすすめ。 * 22:06 * comments(0) * trackbacks(0)
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